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2013年4月29日 (月)

明暗

自分が人からどう見られているかは気になることである。この小説は、自分と自分が話す人の心理状態をきめ細かく描写されている。一人では生きられない。しかし他の人と生活すると多かれ少なかれ軋轢が生じる。そのなかでどう塩梅をつけて生きてゆくかは誰にとっても関心事である。基本的には自分の利益を優先させようとするが、自分が置かれている社会的地位、家庭内での位置、そして親戚関係での位置づけがあり、上手く立ち回らないと、無用の摩擦を起こすし、とんだ災難にもみまられてしまう。そういった世の中をほとんどの人は、多少の自制をもって上手くわたってゆく。しかし、ほんの少しのすれ違いが大きな差になってしまうことはよくある。人と人の出会いや別れはそういったものかもしれない。由夫と延子が結婚したのも、そして由夫が清子と別れたのも  そう言った僅かのきっかけであったと思う。人はそう言ったことを経験して人生にはどうにもならないことがあるのが分かり、執着しないようになってゆくのかも知れない。この小説のなかで小林は由夫の教養を馬鹿にしている。確かに中途半端な教養は人を見下したり、自分を物事に執着させてしまうものである。分かれて1年後に、再びあった清子とどうなるかは、この小説が絶筆であるため誰にもわからない。

夏目 漱石

青空文庫

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