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2011年9月15日 (木)

生活のために妾になったお玉のはかなくも切ない恋物語である。お玉は高利貸しの末造に見込まれて妾にはなったが、当然のことながら愛情はない。末造の欲望を適当に受け流す術を身につけ、毎日、家の前を通りかかる医学生の岡田に恋心を抱く。そして末造の留守に岡田に声をかけようとするが、たまたま、岡田一人ではないため声をかけられず、そのまま恋は終わりを迎えてしまう。岡田はお玉のことを何と思っていたのだろうか。美人が自分のことを好いていてくれるのは分かっていたので悪い気はしなかったと思う。しかしドイツへの国費留学を控え、ややこしい問題に手を出したくなかったのが本音とおもう。恋は理屈ではない。刹那に燃え上がる情念である。もう少し状況が整っていればあるいはお玉と岡田は結ばれたかもしれないが、そうならないのが世の常であろうか。

森鴎外

新潮文庫

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