« 2010年1月 | トップページ | 2011年2月 »

2010年5月30日 (日)

海辺のカフカ

15歳の少年が自分探しの旅にでて成長する物語である

カフカ少年が4歳の時に母親はなぜか姉だけを連れて家を出てしまう。15歳になったカフカは家出し四国の高松の図書館に住み着く。そこで佐伯さんという彼の母親かもしれない女性と知り合う。また道中でさくらという姉かもしれない女性と出会う。物語はこの2人の女性とカフカの父親を殺すナカタさん、ナカタさんの面倒を見る星野さんそして図書館の責任者である大島さんを軸に進む。佐伯さんは美しく、知的だ。しかし彼女は20歳で恋人と死別し燃え尽きてしまう。その後、カフカ少年の父親と結婚するが惰性で過ごしている。ギリシャ神話によれば昔、3種類の人間がいた。男男、女女そして男女である。ところがある日、神の怒りにふれ真っ二つに切り裂かれてしまった。そのため世のなかには男と女しかいなくなり片方はもう片方を求めてさまようようになってしまった。カフカ少年は母親の愛を求めている。しかし物語に出てくる人たちは皆自分探しをしている。われわれは何者か。どこからきてどこにゆくのか。

一度は自殺しようとしたカフカを現実の世界にもどしたのは母親の愛とカフカの成長であったと思う。物語の最後の方でサーファーをしている大島さんのお兄さんが言う。ハワイにトイレット・ボウルというスポットがある。いったん引き込まれるとなかなか浮き上がってこれない。しかし海のそこでじっとしていなくちゃいけない。あわててじたばたしたところで何にもならない。こんな怖いことはないがこの恐怖を乗り越えなくては本物のサーファーにはなれない。

村上春樹

新潮文庫

« 2010年1月 | トップページ | 2011年2月 »