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2010年1月 3日 (日)

あの日にドライブ

とても共感を持って読める本でした。主人公の牧村は「なぎさ銀行」のもとエリート行員。それがたった一度、上司に同意しなかったことで銀行をやめることになり、今はタクシードライバーをやっている。「なぎさ銀行」はとても閉鎖的に描かれており、カラオケは上司より下手にやる、上司より早く出勤し、遅くまで残業するのが常態化している。どの会社も、集団も組織と名のつく物には多かれ少なかれ、そういった息苦しさがある。組織と適当な距離を置かないと(これが大変難しく、うまくできる人は世渡り上手といわれる)、地雷をふんでしまうことがある。牧村の持論は「人生は偶然でなりたっている」である。人生も半ばを過ぎれば人生が自分のコントロールできない何かによって操られていることが分かる。

大学時代の恋人、恵美が離婚して戻っている実家の近くで客待ちのふりをして恵美が庭にでてくるのを待つ。そして昔と変わらぬ、いや昔以上に見えた恋人の容姿。成就せぬ恋ゆえのせつなさ、未練、悔悟、甘美な思いでがまじりあったカクテル。もしあの時、ことなった選択をしていたらというバーチャル人生は楽しい。

人は年をとるに従って選択肢が少なくなると言われる。人生は選択の連続であり、どんな選択をするかにより、今がそして将来が決まる。人がうらやむ大金を手にすることもあれば、今日の夕食にも事欠くこともある。節目の選択の時、これまでの経験や信頼できる人の助言、将来予測そして勘などあらゆるものを動員して決断を行う。しかし結論が出ずサイコロを振る時もある。良かったか悪かったかが後でわかる時もあれば永遠に分からない時もある。どうしてそういう決断をしたのかは偶然ともいえるしまた運命ともいえると思う。はっきり言えることは人間過去にも未来にも生きられないことだ。現在に生きるしかない。その現在は豊穣である。考え方ひとつで悲しくも、楽しくもなる。

この小説は青い鳥がベースになっていることは明白であるが、中年の悲哀を描いて切ないものとなっている

光文社文庫

萩原 浩 著

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