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2007年5月29日 (火)

異端の数ゼロ

この本は本文もいいが付録がすばらしいと思った。普通、本の付録は補足としての役割が大きく付けたしである。

付録のなかでゼロの割り算を許すと1プラス1が10にも20にもなり論理が破壊されてしまうことが述べられている。しかし世の中の数々の矛盾そしてうそはゼロで割ることを許しているようにも思える。

付録の導関数に関する説明もいいと思う。高校の数学では本文にあるニュートンのごまかし、εとεの2乗を比べるとεの2乗のほうが早くゼロになるから無視できると説明され釈然としなかった思い出がある。付録の導関数の説明は分かりやすくすっきりしている。

また本文にあるアキレスが亀に追いつけないというゼノンの呪いは無限級数が収束することを証明できて初めて解けたことが示されている。ちりも積もれば山となるという例えがあるがどうして無限のものを足しても有限になるか分からなかった思い出がる。そのときは個数と量を混同していた。

それにしても複素平面と球を結びつけるというリーマンの大胆不敵な発想はどこから来るのだろうか。iを掛けるということは球を90度時計回りに回転させることだという。また球の北極に小さな光を置けば球の全ての点は球がおかれている平面上に投影されるという。北極が無限大で南極がゼロである。たしかにこれならばゼロと無限を扱える。

無限の大きさを比較するカントールの発想の大胆さ、簡潔さも見事であるとおもう。数学者だけでなく物理学者も天才といわれる人の発想は驚くべきものがある。相対性理論はもちろんのことゼロが作り出してしまう特異点を回避するための紐理論など。われわれはまだほんのわずかしか世界を理解していない。

異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 Book 異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念

著者:チャールズ サイフェ
販売元:早川書房
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2007年5月 7日 (月)

素数に憑かれた人たち

素数に憑かれた人たち ~リーマン予想への挑戦~ Book 素数に憑かれた人たち ~リーマン予想への挑戦~

著者:John Derbyshire,ジョン・ダービーシャー
販売元:日経BP社
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この本はリーマンの予想がどんなものであるかを豊富な数式で分かった気分にしてくれた。

ソートイの「素数の音楽」読み物としてはすばらしかったが、さすがに数式がほとんどなしでは分かった気分になれなかった。この本を読んで改めて分かったのはリーマンは素数の量(数)を示す公式を定義したのであって、予想だけをしたのではない。リーマンの予想「ゼータ関数において自明でない零点の実数部は1/2である」はリーマンの素数公式の性格を決める(Wikipediaによればリーマンの予想がただしければ素数分布が完全に解かれる)がたとえリーマンの予想が間違っていたとしても1859年の論文の核心は正しい。

その核心とは素数の数を近似ではあるが最も正確に求められること。すでに証明されている素数定理はリーマンの素数公式に比べれば緩やかな制約の下に定義されているため荒い。リーマンの公式のクリティカルラインが0と1/2であるのに対し、素数定理のそれは0と1としている。

この本はエルミート行列、行列の固有値など久しく忘れていたことも思い出させてくれた。著者のダービーシャーが言っている。複素平面上のゼータ関数は何層もの面を形成するがそれがわかるようになるためには何年もの訓練が必要であると。数学者は四六時中数学のことを考えている(というより考えられるというべきか)ため普通の人にはできないことを想像できるのだろう。それにしてもリーマンは数学に関しては大胆でナポレオンのようだ。

途中で挿入されている話も面白い。数学関係では(もちろん、数学関係が最も多い)マイナス掛けるマイナスがなぜプラスになるかの見事な説明。オイラー積とエラステネスのふるいの関係。数学以外では、ナポレオンが「史上最高の数学者がいる」という理由でガウスのいるゲッティンゲンを攻撃しなかったこと。

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